『あの頃、君を追いかけた』
台湾には2度だけ訪れたことがある。一度目の訪問のときは、僕はまだ16歳だった。1時間先の時を過ごす君と、毎日連絡を取りあった。台北の街でWi-Fiを拾うたび、君のことを考えた。
二度目の訪問のとき、僕は19歳になっていた。
新幹線の窓を過ぎ去って行く嘉義の景色を眺めながら、一体何を考えていたのだろう。思い出せない。東洋史の期末レポートのことか?
きっと違う。
19歳の僕は、痩せ我慢が得意だった。
台湾のことをもっと知りたい。目の前に横たわっている現実を、きちんと知ろうとしなかった。僕の幼稚なところだ。
六次の隔たりがこんなにも見えやすくなったこの世界で、僕は今の君のことを何ひとつ知らない。
あの頃だって、よく知らなかった。
肝心の映画の話をしておくと、1回目の青いペンで全てを察してしまい、そこからずっと重苦しい気持ちで観ていた。いや、本当はタイトルの段階で覚悟しておくべきだったのだ。
月を見上げるシーンが好きだ。
♯4
『フィールド・オブ・ドリームス』
10年以上ラジオでトウモロコシ畑の話をしているおじさんのファンだから観た。あと『メジャーリーグ』ね。
PTAのくだりは、60年代を過ごした人たちにとっての60年代の空気感を、リアルに感じられたシーンだった。本を焼く人は20年代にも存在し、僕らのすぐ近くで息をしている。
キャッチボールっていいよな。
キャッチボールを見ると、いろいろなことを思い出す。
宮崎神宮横の公園でしたキャッチボールが、父とした最後のキャッチボールかもしれない。
野球部でキャッチボールのペアだった友人とは、連絡が取れなくなって久しい。僕にとっては、彼が医者になるかよりも、また彼とキャッチボールができるかどうかの方が大事だったんだけどな。
今度、大人になってからできた数少ない友人と、キャッチボールをする約束をした。こればっかりは守らなくちゃいけない。
#3